落語の演目「まんじゅうこわい」からみる京・大阪の上方落語と江戸落語の違い
京や大阪で発達した上方落語と江戸で発達した江戸落語の違いは、言葉、演目(題名・内容)、落とし噺・人情噺、演出にあります。
上方落語の言葉は京言葉や大阪言葉など噺に登場する人物に合わせて話し方が変わり、上方では江戸言葉を話す噺は少ないことが知られています。演目では京や大阪での上方落語と江戸落語は互いに交流しそれぞれに演目が伝わっています。
特に江戸から上方に伝わった「酢豆腐」は京屋大阪では「ちりとてちん」になり、上方から江戸に伝わった「たち切れ線香」は「たちぎれ」などになり、演目によっては登場人物の名前も変えることで、京や大阪、江戸の落語に合わせています。
また、上方落語の舞台は京や大阪のみではなく、旅の目的地やその道中の旅ネタが多くあり、東はお伊勢参り、西は金比羅参り、南は紀州、北は池田屋などに加え、あの世である冥土、天空の月、海底の旅、異国の旅など京や大阪から足を伸ばすものまでがあります。また、上方落語では噺の終わりに洒落やダジャレを使う落ちのある落とし噺、江戸では人生やその生き方と結果などを伝える人情噺が主流となっています。
京・大阪の上方落語と江戸落語の双方の寄せきで使用する共通の道具は扇子と手ぬぐいで、橋に見立てたりモチに見立てたりします。上方落語に独自のものとして千石船などにみたてる見台、話の展開を変えたり裏方に合図をする小拍子、さらに見台から見える膝を隠す膝隠などが有ります。また、小拍子での合図で流れる三味線屋お囃子などの音声も上方落語独自のものです。
京・大阪で発達した上方落語と江戸落語の違いを表す噺が「まんじゅうこわい」です。この話は江戸が発祥と言われており、暇を持て余した若者数名が集まりそれぞれに怖いものを言い合うのですが、その中の1人が「怖いものはない」というので、問い詰めるとその男は「実は・・・まんじゅうが怖い」といいます。そこで若者たちは、その男が寝入った隙にまんじゅうを側に置いてやり目を覚ますのを待つと、「怖い怖い」と言って食べきってしまうという噺です。この噺が当時の京や大阪の上方落語の演目では、暇を持て余した年配男性になり、それぞれが好きなもの嫌いなものを上げていくのに時間をかけ、約30分ほどしてまんじゅう嫌いの男の話が始まることにあります。
暇人の数人が嫌いなものや怖いものとして、狐に化かされた噺、若いころの怪談話などがあるため江戸落語と違い大ネタとされているのです。また、狐に化かされるという噺は、江戸落語では独立した噺になっています。
京や大阪で発達した上方落語と、江戸で発達した江戸落語はそれぞれの文化的背景などの変化を加えながら今も日本芸能の基礎となっています。
落語協会URLhttp://www.kamigatarakugo.jp/
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