上方落語で使われる大阪弁の源流・船場言葉について
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上方落語の噺を聞いたことのある方はその話し方に柔らかさやまろやかさを感じるはずです。一般的に大阪弁を話す人のイメージはおもしろい・ケチ・派手好き・下品・根性がありそう・ヤクザ・怖いなどが有りますから違いに驚きます。
この大阪弁に関するイメージですが、古くは江戸時代から形成され始め、近代のエンタツ・アチャコの漫才、そして現代では1980年代にあった事件や事故などが東京のメディアなどに取り上げられることが理由とされています。多くの方が言う関西弁とは、大阪弁や京言葉などを含む近畿方言、あるいは中国地方や四国地方までを含むことがあるため、関西出身者に関西弁について聞いてもどの方言・言葉のことなのかわからないことがよくあるのです。
この大阪弁などの中で注目されているのが船場言葉です。
この船場言葉は16世紀の後半から明治・大正・昭和初期にかけて大阪弁の代表格となっていた言葉です。使用されていたのは江戸期の大阪船場で、この場所は日本全国から年貢米や物資が最も多く集まる場所の大阪船場、そのすぐ北には堂島米会所があり、4ヶ月毎の年3回春・夏・冬に合わせて帳合取引(延取引・世界最初の先物取引)が行われています。この取引などで使用されていたのが大阪弁の船場言葉で、最初に触れた上方落語もこの船場言葉の流れを組んでいるのです。
この船場言葉は戦国時代の戦乱の世が終わったころ、堺商人の言葉を軸に、地元の平野(大阪)商人、京都の伏見商人、琵琶湖周辺の近江商人などの言葉が交じることによって生まれたとされています。その言葉の柔らかさやまろやかさは京言葉から大きな影響を受けているのが特徴で、商いや取引で必要な丁寧・上品が求められていたことが理由となっています。
この船場言葉の特徴として以下のものが挙げられます。短絡語が多い「例えば労働組合を労組と表現するなど」、会話の中に断定がない「考えときまっさ」など、言葉に尊敬語・謙譲語・同等語・命令語・侮辱語がある、単語の母音を引っ張って発音する「目をメェと発音する」など、「が」や「を」の接続詞を使わない「目が痛い」が「メェ痛い」などです。また、京言葉の影響を受けているため女性的表現として会話の語尾に「~のん」「~てん」「~ねん」「~はる」「~し」などが付きます。
また、この船場言葉は相手の役職・身分・状況・業種によって使用する表現が細かく分かれているため、他の大阪弁に比較すると複雑で庶民的ではない貴族的な言葉であるという言語学者もいます。
しかし、今に伝えられる上方落語から聞こえる船場言葉のまろやかな表現は、多くの市民の心を捉えるとともに、船場言葉の保存へ向けた取り組みが始まり、今では「なにわ言葉」と呼ばれているのです。
上方落語協会URL http://www.kamigatarakugo.jp/
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